コラム

ケタミン療法の鍵を握る「mTOR経路」とは?精神科専門医が解りやすく解説。

今回は、ケタミン効果のカギを握る【mTOR経路】について、わかりやすく解説します。


mTORってなに?

「mTOR(エムトア)」は、「mechanistic Target of Rapamycin」の略称であり、
その役割は、細胞の中にあるタンパク質の合成や細胞の成長を管理する“司令塔”のような存在です。

名前の由来

mTORという名称は、天然の抗生物質であるRapamycinが特定のタンパク質キナーゼに結合して作用を発揮することがわかり、それをTOR(Target of Rapamycin)と定めたことに由来します。

作用メカニズム

mTOR経路とは、正確には「mTORを中心とした一連の信号の流れ(シグナル伝達経路)」のことです。

例えば:

・細胞が「栄養が足りてるぞ!」「今はエネルギーがあるぞ!」と感じると…
・mTORが「よし、新しい部品(タンパク質)を作ろう!」と命令します。

といったイメージです。

脳におけるmTORの役割

脳では、記憶・学習・気分の調整に関係する神経ネットワークを強化するために、新しいシナプスを作るのが重要です。

mTOR経路は、BDNFやIGF-1を誘導することでシナプスの「再構築」や「強化」に関わっており、うつ病ではこの働きが弱くなっていることが知られています。

ケタミンとmTOR経路の関係

ケタミンはmTOR経路を一気に活性化させることで、壊れていた神経のつながりを再構築します。

それにより、神経ネットワークが回復することで、ケタミンの投与から数時間以内の「即効性のある抗うつ効果」につながります。

 

ケタミン療法の鍵を握る「mTOR経路」とは?精神科専門医が解りやすく解説。
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