うつ(うつ状態)は、憂うつ(通常の気分の落ち込み)とは言えない程度の強い気分の落ち込み、やる気が出ないなどの精神症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるい、といった身体的な症状が複合的に現れる状態で、うつ状態のうち、ある一定の基準に当てはまる場合に「うつ病」と診断されます。
<抑うつ障害群>
・うつ病(大うつ病性障害)
メランコリーの特徴をもつもの
・非定型うつ
・季節性うつ
・持続性抑うつ性障害(気分変調症)
・月経前深い気分障害(PMDD)
<うつ状態をきたし得る身体疾患>
・甲状腺機能低下症
・睡眠時無呼吸症候群
・更年期障害
・脳腫瘍
・パーキンソン病
・てんかん
・貧血
・ビタミン欠乏症
・亜鉛欠乏
・認知症
・リウマチ性多発筋痛症
・脳梗塞
・糖尿病
・潰瘍性大腸炎
など
<うつ状態をきたし得る物質>
アルコール
違法薬物
薬剤(ステロイドなど)
抗精神病薬
など
<うつ状態をきたし得る、うつ病以外の精神疾患>
・適応障害(はっきりとした原因が存在し、3ヶ月以内に発症、原因の除去後、6ヶ月以内に消失することが条件)
・双極性障害
・依存症
・統合失調症
・パーソナリティ障害
・神経発達症群(発達障害)
など
<うつ状態を来たし得る状況(必ずしも病気とは言えないものを含む)>
・心因反応(悲哀)→ストレスの高い出来事、死別、リストラなどによる高ストレス状態
・不調、体調不良(生活習慣の乱れからくるもの)
・疲弊、消耗(長時間労働や過重労働)
・不適応状態(本人の気質やキャパシティと環境とのミスマッチ)
・アパシー
・新型うつ(状況依存性の抑うつ状態に陥る病態)
竹内武昭:うつ病の除外診断と併存疾患 Jpn J Psychosom Med 60:44-49,2020 より作成(一部改変)
このように、一口にうつといっても、実際には状態や病態は様々であり、すべてのうつに対して同じような薬物治療をしていても改善が見られない場合があります。単に生活習慣の改善で治る場合もあれば、体調不良が原因の現状もあります。あるいは、身体の病気が隠れていて、それが原因でうつが引き起こされている場合もありますし、もっと根本的に生い立ちや過去の出来事が根っこにある場合もあります。
当院では、「症状を聞いて薬を出す」だけのメンタル医療ではなく、うつをきたし得る原因を一つずつ丁寧に検討し、患者さんの状態に合わせて最適な治療をご提案いたします。