産後うつにおけるTMSの有効性について述べる前に、まずは産後うつについて説明致します。
産後うつは、出産後に起こるうつ病のことを指します。出産後のうつ病は、産後うつ病とも呼ばれます。産後うつは、出産後の2週間から1年程度の間に起こることがありますが、一般的には出産後の4週間から12週間以内に発症することが多いとされています。
産後うつの原因は複数ありますが、主な原因は以下のようなものが挙げられます。
ホルモンバランスの変化:出産後、女性のホルモンバランスが急激に変化するため、うつ病のリスクが高まります。
睡眠不足:新生児の世話や夜泣きなどにより、睡眠不足が続くことが原因となることがあります。
ストレス:出産後は、育児や家事などのストレスが増えるため、ストレスが原因となることがあります。
妊娠・出産に対する不安や恐怖心:妊娠中や出産後に、自分や赤ちゃんに何かあるのではないかと不安になることがあります。
産後うつの症状には、以下のようなものがあります。
気分が沈んでいる、不安や焦りを感じる
疲れやすく、動悸や息切れがする
食欲不振や過食、体重の増加や減少
睡眠障害
赤ちゃんへの興味がなくなる、育児に対する興味や関心が薄れる
産後うつは、適切な治療を受けることで回復することができます。治療法には、認知行動療法、薬物療法、心理療法などがあります。また、家族や周囲の人々からのサポートも重要です。産後うつの症状を感じた場合は、早めに医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
産後うつを含めた、周産期うつ病に対するrTMSの有効性に関する臨床試験の数は現時点でまだ限られていますが、いくつかのデータで有効性が示されています。1つの無作為化プラセボ対照比較試験では、周産期うつ病に対するrTMSの抗うつ効果の効果量は0.87であり、実刺激群では反応率が41~71%、寛解率が21~30% であったと報告されています。また、これらの臨床研究において重篤な有害事象の発生も報告されませんでした。
TMSが産後うつ病に対して効果的であることを示すためには、さらなる研究が必要ですが、乳児への影響を考えると薬を飲みづらい産後のメンタル不調においても、TMSは治療選択肢の一つとなる可能性が充分にあります。